2024年10月10日木曜日

第9回演奏会の曲目解説(1)

第9回演奏会の開催に先立ち、当日配布するプログラムに掲載の解説文をご紹介します。ご来場前に是非ご一読ください。

セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)


チェロと管弦楽のための交響的協奏曲 ホ短調 作品125(1952)

 プロコフィエフは帝政ロシア下、現在のウクライナのドネツィク州に生まれた。13歳からサンクトペテルブルク音楽院で作曲とピアノを学び、1917年のロシア革命以後はアメリカ、ドイツ、パリと居住地を移しながら作曲家、ピアニスト、指揮者として活躍した。作曲家としてはオペラや交響曲、バレエ音楽、協奏曲、ピアノソナタなど幅広いジャンルの音楽に傑作を残している。渡米に際しては日本を経由し、船便の都合で約2ヵ月日本に滞在し、東京、横浜で自作を含むピアノリサイタルを開催した。この時に関西で聴いた『越後獅子』を後の名曲ピアノ協奏曲第3番のモチーフに採用したとされる(諸説あり)。

 本日演奏する曲は、形態的には「チェロ協奏曲」である。元となるのはチェロ協奏曲第1番ホ短調作品58。この曲自体は1938年モスクワで初演されたものの失敗に終わり、プロコフィエフは自信を喪失したと言われる。第二次大戦後、1947年にロストロポーヴィチのチェロ独奏で蘇演されたことをきっかけに、彼の提言と協力によって大幅な改作を行って本作の完成に至る。作品番号を改め1952年、ロストロポーヴィチの独奏、リヒテルの指揮で初演された。高度な演奏技術を要求される独奏チェロが圧倒的な存在感を示しながらも、楽曲全体としては高い抒情性が特徴である。

第1楽章 Andante ホ短調 2/4拍子
 楽譜に明確に書かれてはいないが、冒頭は軍隊行進曲である。オーケストラは前線に向かう戦車の隊列を髣髴とさせ、独奏チェロは全楽章を通じてほぼ常に高音部記号で書かれており、戦場に向かう兵士の魂の悲痛な叫びの様相を呈している。全体は5つのセクションに分かれている。
 最初の6小節で基本のリズム(=運隊の行進)が提示され、これはオスティナート(同一音型)のように繰り返し現れる。次のセクションはヴァイオリンの下降音階で始まり、転調を繰り返す。3番目のセクションは複数の旋法で構成される独奏チェロのカデンツァである。4番目のセクションではピチカートを多用したオーケストラ中心のブリッジ。5番目のセクションでは最初の主題が戻ってくる。

第2楽章 Allegro giusto イ短調 4/4拍子
 自由なソナタ形式。独奏チェロパートが最も充実して書かれている中心的楽章で、これに比較すると「第1楽章と第3楽章はプロローグとエピローグに過ぎない」と評されることもある。独奏チェロの重音奏法を多用した超絶技巧と各管楽器のソロの絡みが魅力的。それを引き立たせるために、オーケストラには特に弱音のクオリティが求められる。独奏チェロが奏でる第1主題はほぼ常にイ短調の属音であるホ音をピークとして、不安を煽り続ける。変イ短調、変ホ短調など次々転調した後、ホ長調に転調すると伸びやかな第2主題が現れる。独奏チェロのカデンツァはいたる所にオーケストラのオブリガートを伴い、高度なアンサンブルが求められる。

第3楽章 Andante con motoホ長調 3/2拍子
 冒頭に独奏チェロが美しく伸びやかな第1主題を奏で、中盤からベラルーシ民謡を元にした民族色の濃い第2主題が現れる。この2つの主題による別個の変奏曲が組み合わされる二重変奏曲形式。第2変奏以降は中断せず演奏される。結尾部ではトランペットから木管に受け渡されるファンファーレの向こうから、独奏チェロの超絶技巧が浮かび上がる。

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