2020年11月17日火曜日

【曲目解説】モーツァルト 交響曲第1番 変ホ長調 K.16

♭ ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791) 交響曲第1番 変ホ長調 K.16

 モーツァルト一家は1763年から3年半にも及ぶ長い旅に出ました。その訪問地の一つ、ロンドンは産業革命による繁栄期を迎えつつあり、お金を払えば誰でも(貴族でなくても)聞けるコンサートがありました。そこでヨハン・クリスチャン・バッハ(かの大バッハの末子です)やカール・フリードリッヒ・アーベルの交響曲などに触れた幼いモーツァルトは、自分でも交響曲を書いてみることにしました。そして数か月の試行錯誤の末に出来上がったのがこの曲です。1765年2月にロンドンのヘイマーケットで初演されました。急-緩-急の3楽章から成る当時のオーソドックスなスタイルで、バッハやアーベルをお手本とした習作と言って良いでしょう。なお、自筆譜には多くの修正が残っていて、決してさらさらと生み出された訳ではありません。
 ピアノの即興演奏の形で5歳の時に作曲を始めたモーツァルトは、旅を通じて各地の音楽を吸収し、8歳にして交響曲を作曲するまでに成長したのでした。一部に父レオポルドによる補作が行われていますが、モーツァルトの将来を予感させるには十分な作品です。

第1楽章 Allegro molto 4/4 変ホ長調
 ソナタ形式。第1主題は変ホ長調の分散和音のファンファーレで快活に始まり、すぐに静かな掛留音の響きが対比されます。第2主題は属調である変ロ長調で、陽気に弾むリズムが描かれます。強弱の対比・シンコペーション・ユニゾン・トレモロ・急速な音階・反復といった基本的な作曲技法が用いられています。

第2楽章 Andante 2/4 ハ短調
 2部形式。第1楽章の平行調であるハ短調が用いられており、クリスチャン・バッハの影響が見て取れます。活気溢れるロンドンで、レオポルドは死の淵をさまよう病を患ったと伝えられています。幼いアマデウスがその死を予感したわけでは無さそうですが、後々モーツァルトにとってハ短調は死と結びついた重要な調性になって行きます。

第3楽章 Presto 3/8 変ホ長調
 ロンド形式。雰囲気は一転してジーグ風ですが、冒頭は1楽章のファンファーレの短縮形で、全曲の統一感が計算されています。モーツァルトらしく自由で明るい楽想が展開し、最後は快活に曲を閉じます。

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